バスクに根付く、共有・共栄の文化
Kaixo!(カイショー!:バスク語で「こんにちは」!)
チャコリ伝道師の高橋綾乃です。
仕事を辞めて、単身乗り込んでしまうくらい、好きになってしまった地、バスク。
その魅力をいろんな形で届けていきたいなと思っています。
今回は「バスクに根付く、共有・共栄の文化」について、現地で体験したこと・感じたことを踏まえてお話しようと思います。
なぜ私がチャコリ以外のワインも紹介するのか?ということの根底にある考え方でもあります。
ちょっと長いですが、ご興味のある方、ぜひご覧いただけると嬉しいです。
目次
バスク=美食の地、なぜそうなったのか?
今や「世界一の美食の街」と称されるほど、バスク=美味しいものが食べられる場所!のイメージがありますが、どのようにしてこの文化が発展してきたのでしょうか?
まずは地理的条件で言うと、北はカンタブリア海に面し豊かな海の幸があること、また少し内陸に行くだけで「グリーンスペイン」といわれるほど緑豊かな地が広がり、山の幸も豊富です。
美味しい素材が豊かにあるということは、確かに美食文化の発展には欠かせない要素だと思います。
しかし、それだけでここまでの進化を遂げることができるのでしょうか?
門外大放出!公開レシピの文化
バスク地方には、ミシュランの星付きのレストランがたくさんあります。
サン・セバスチャンが「世界一の美食の街」といわれるゆえんは、市の人口に対してのミシュランの星の数が、世界のどの街よりも多いから、という理由です。
もちろん、そのような高級レストランでの食事もすごく楽しいですが、現地の人たちの生活に根付いているバルで食べる小皿料理=ピンチョスのクオリティも、「立ち飲み屋のおつまみレベル」をはるかに超えたものが沢山提供されています。
バスクのピンチョスはもはや手軽に食べられるフィンガーフードの域ではなく、「レストランのコース料理のミニチュア版」と称されるほどなんです。
バスクでは、「良くできたレシピを公開する」という文化があります。
公開の方法も様々です。各地で開催されるピンチョスコンクールに出場したり、TVやラジオなどへ出演して披露したり。あとはバルのスタッフさんに聞いたら結構いろいろ教えてくれます。
例を一つ挙げてみますと、日本で話題になっている「バスクチーズケーキ」ってありますね。
あの独特なチーズケーキは、サン・セバスチャンのバル、「ラ・ビーニャ」で出されているチーズケーキです。
お店のオーナーのサンティさんはとても気さくな方で、地元のTVにも出演したりしています。
その番組内で、レシピを詳細に紹介してくれています。
「このチーズケーキのレシピを教えて!」と言うと、ご自身が出演した番組を録画したDVDをくれて、「家でも作ってみて!」と言ってくれるくらいです。
そう言っているサンティさんに、すごく衝撃を受けたことを覚えています。
日本人的な感覚からすると、そういう人気店のレシピほど「門外不出」とか「秘伝のレシピ」として、ここでしか食べられないということに価値を感じるものですが、サンティさんの様子を見て、すごいなぁと思ったものです。
まったくの逆、まさに「門外大放出」(笑)
「自分の家で作ったのを楽しんでもよいし、お店で楽しんでくれても嬉しいよ。」
そう言って笑っているサンティさんから、自信も感じました。
文化の根底にあるのは、バスクの人たちの心
この考え方は、サンティさんだけでなく、バスクの人たちの意識の根底にあるような気がします。
良いものをシェアする、さらに良いものを作る。そういう文化のある所に意欲のある料理人が学びに来て、修行した後は自信をもって自分のお店を出す。
そうやって、バスクの美食の文化は発展していきました。
バスクを思い浮かべるとき、どこか特定のひとつのレストランではなく、どこで何を食べても美味しい、町全体としての美食の文化を発展させるのに一番大事なことは、その地の人々の心だと感じます。
そしてこれはレストラン業界だけではなく、チャコリのワイナリーでも同じです。
今、いろいろなワイナリーが、自分たちの土地の可能性、自分たちの地場のぶどうの可能性を探して挑戦を繰り返しています。
私が働いていた時も、ワイナリー同士の交流や、お互いのワイナリーを見学に行ったり、情報交換をしたりということを積極的に行っていました。
自分たちのチャコリが売れればいいというのではなく、チャコリ全体の価値を上げていくために何をしたらいいかを考える生産者の方々を見ていると、この心の持ち方があって、文化として発展していくのだなと強く感じました。
チャコリ伝道師は、チャコリ以外のワインも売る
バスクの方たちのこの精神に、すっかり魅了されてしまった私は、現在チャコリ伝道師としてバスクの魅力、チャコリの楽しさを届ける活動をしています。
当店のオンラインショップはバスク専門店ですが、それとは別にオリジナルオーダーでワインのご注文を承っています。
それはなぜかというと、このバスクの心を私も持ち続けたいなと思ったからです。
バスク大好きな私ですが、決してバスク至上主義というわけではないのです。
バスクのワインが楽しいように、ほかの国や地域のワインにも楽しさやおいしさがあります。
皆様にいろんなワインを届けることで、「ワインって美味しいな」「ワインは生活を豊かにしてくれるな」「ワインのある空間、楽しいな」という気持ちを届けたいなと思っています。
チャコリだけが売れればいいのではなく、ワインを楽しむ人・機会を増やすこと。
その中で、「今日はチャコリにしようか」と思ってくれる人を増やすこと。
それが私の使命かなと思っています^^
難しいこと抜きにして、気楽にワインを楽しみましょ~
オリジナルオーダーのご相談、いつでも承りますのでこちらからお気軽にお問い合わせくださいませ。
長いお話に付き合ってくれてありがとうございました!
Agur!(アグール:またね!)
Ados!
Eskerrik asko!!!!